胸壁開窓術後に化学療法を施行した膿胸関連リンパ腫の1例
吉富 淳1)3) 千田 金吾1) 須田 隆文1) 桑田 博史1)3) 戸館 亮人1) 塚本 克紀1) 中村 浩淑1) 高橋 毅2) 鈴木 一也2)
〒431-3192 静岡県浜松市半田町3600 1)浜松医科大学第2内科 2)同 第1外科 〒420-0853 静岡県静岡市追手町8-2 3)静岡赤十字病院呼吸器科
人工気胸術後の膿胸腔に発症する膿胸関連リンパ腫は膿胸の存在から化学療法が困難となる場合がある.我々は胸壁開窓術を施行し胸腔内洗浄を行いつつ膿胸の感染をコントロールし,化学療法を施行した症例を経験した.症例は18歳時に右人工気胸術の既往を有する62歳男性で,咳嗽を主訴に当科を受診し,胸部画像上虚脱した右肺に接して膿胸腔が存在し,穿刺液の細胞診から悪性リンパ腫が強く疑われた.入院後,慢性膿胸の感染悪化による高熱が出現したため,右胸壁開窓術を施行したところ,腫瘍が膿胸腔に沿って進展しており,気管支胸膜瘻も存在した.生検組織よりnon-Hodgkinリンパ腫,diffuse large cell type(B cell type)と診断した.抗生剤の投与下に連日の胸腔内洗浄を行い,顕性膿胸は終息し,胸壁開窓部を開放したまま化学療法(CHOP療法6コース,DeVIC療法7コース)を施行し,術後17カ月の生存を得た.
膿胸関連リンパ腫 慢性膿胸 悪性リンパ腫 胸壁開窓術 EBウィルス
Received 平成10年6月11日
日呼吸会誌, 37(8): 619-622, 1999