胸水細胞診で確定診断した胸腺原発カルチノイド多発転移の1例
高木 重人 西川 正憲 鈴木 基好 宮下 明 金子 猛 池田 大忠 鈴木 俊介 中谷 行雄*
〒236-0004 横浜市金沢区福浦3-9 横浜市立大学医学部第一内科 *同 附属病院病理部
症例は57歳,男性.心嚢水貯留による呼吸困難で発症,胸部XP・CTにて前縦隔腫瘍を認め,前医で心嚢水細胞診の結果より胸腺癌,癌性心嚢炎と診断された.当院転院後に胸水貯留が出現し,その細胞診で細顆粒状のクロマチンが増加した類円形核と,やや顆粒状の細胞質を有する単調な小型卵円形の異型細胞の集塊を認め,免疫染色でクロモグラニンA陽性となり,カルチノイドと診断した.画像所見とあわせて,胸腺原発カルチノイド多発転移と診断した.緩和療法に努めたが,8カ月後に死亡し,剖検にて定型的カルチノイドの組織診断を得た.細胞診により胸腺原発カルチノイドと診断し得た報告はきわめて稀である.また,通常良好な予後の期待できる定型的カルチノイドでありながら,診断時にすでに広範な転移をきたしており,胸腺カルチノイドの診断や性状について示唆に富む症例と考えられた.
胸腺カルチノイド 定型的カルチノイド 胸水 細胞診 多発転移
Received 平成10年11月5日
日呼吸会誌, 37(8): 631-635, 1999