小柴胡湯による薬剤性肺炎を発症した自己免疫性肝炎の1例
〒799-1341 愛媛県東予市壬生川131 1)公立周桑病院内科 *現 町立成羽病院内科
症例は71歳,女性.1995年近医にて自己免疫性肝炎と診断され,加療されていた.1997年7月28日より小柴胡湯7.5g/日が投与され,2週間後より呼吸困難感が出現し入院した.入院時PaO2 55.6Torrの低酸素血症と,胸部レントゲン写真では両下肺野を中心に間質性陰影を認めたため小柴胡湯による薬剤性肺炎と考え,prednisolone 50mg/日の投与を開始し,翌日より胸部陰影,臨床症状,検査成績の改善を認めた.気管支肺胞洗浄液中のリンパ球での小柴胡湯に対する薬剤リンパ球刺激試験(DLST)は陰性であったが,末梢血リンパ球でのDLSTは陽性であり,その成分である半夏及び黄ごんも陽性であった.退院後の肝生検ではグリソン鞘内及び肝実質内に強いリンパ球を主体とした炎症細胞浸潤およびグリソン鞘周囲に形質細胞の浸潤が軽度に認められ,自己免疫性肝炎に矛盾しない所見であった.自己免疫性肝炎での小柴胡湯誘起性肺炎の報告はなくきわめて稀と考えられ報告する.
小柴胡湯 薬剤性肺炎 自己免疫性肝炎 薬剤リンパ球刺激試験 気管支肺胞洗浄液
Received 平成10年11月13日
日呼吸会誌, 37(8): 641-646, 1999