気管支胸膜瘻による続発性気胸を併発した膵性胸水の1例
桜井 稔泰1) 藤山 理世1) 大西 尚1) 多田 公英1) 冨岡 洋海1) 坂本 廣子1) 岩崎 博信1) 青木 稔2)
〒651-2273 神戸市西区糀台5-7-1 1)西神戸医療センタ-呼吸器科 2)同 呼吸器外科
気管支胸膜瘻による続発性気胸を併発した膵性胸水の1例を経験した.症例は49歳男性で,主訴は乾性咳嗽と労作時呼吸困難.大酒家で,仮性膵嚢胞を伴うアルコール性慢性膵炎で治療中.胸部レントゲン写真で右胸腔にニボーを伴う大量胸水を認め,精査加療目的で入院となった.胸水中アミラーゼが20,955IU/l(P型100%)と高値を示し,腹部CTで膵体尾部の仮性嚢胞から胸腔内に連続する内瘻が確認されたため,慢性膵炎に伴う膵胸膜瘻による膵性胸水と診断した.また気胸の原因は,胸腔内薬液注入により気管支胸膜瘻(Bronchopleural fistula以下BPF)によるものと確認された.臨床経過は,膿胸を合併したが,胸腔ドレナージ,絶食,抗酵素療法,薬物による膵外分泌の抑制等の保存的治療により軽快した.膵性胸水に気胸を併発した症例は希であり,膵性胸水および気管支胸膜瘻の発生機序,治療経過につき考察を加え報告する.
Received 平成11年1月18日
日呼吸会誌, 37(8): 662-666, 1999