Hughes-Stovin症候群を呈し,ステロイド治療により肺動脈瘤の消失を認めたBehçet病の1例
八木 毅典 山岸 文雄 水谷 文雄 佐々木 結花 坂尾 誠一郎 多田 裕司
〒260-8712 千葉市中央区仁戸名町673 国立療養所千葉東病院呼吸器科
症例は右下肢血栓性静脈炎の既往がある32歳の男性で,多量の喀血のため当院に入院となった.胸部単純X線写真では右肺野に多発性の円形陰影を認め,肺動脈造影で多発性の動脈瘤であることが確認された.また,右下肢深部静脈と大腿静脈の閉塞を認め,深部静脈血栓症も合併していた.肺動脈瘤と深部静脈血栓症の合併した病態はHughes-Stovin症候群として知られているが,本症例は口腔内アフタ性潰瘍と外陰部潰瘍を認め,不全型Behçet病の基準も満たしていた.ステロイド治療により臨床症状は改善し,治療開始3カ月後の肺動脈造影では肺動脈瘤は消失していた.このようなHughes-Stovin症候群の臨床像を呈したBehçet病は非常にまれで,治療により肺動脈瘤が消失したという報告は過去に4例しかなく,文献的考察を加え報告した.
Behçet病 Hughes-Stovin症候群 肺動脈瘤 深部静脈血栓症 喀血
Received 平成12年6月8日
日呼吸会誌, 39(2): 140-144, 2001