胸腔鏡下肺生検後に急性増悪した特発性肺線維症症例の検討
榎本 達治1) 川本 雅司2) 功刀 しのぶ2) 平松 久弥子1) 榊原 桂太郎1) 臼杵 二郎1) 吾妻 安良太1) 平井 恭二3) 小泉 潔3) 福田 悠2) 工藤 翔二1)
〒113-8603 東京都文京区千駄木1-1-5 1)日本医科大学内科学第4講座 2)同 第1病理学教室 3)同 外科学第2講座
1997年1月から2001年12月までの5年間に当院で施行された胸腔鏡下肺生検で通常型間質性肺炎と診断された特発性肺線維症9例のうち2例が術後急性増悪を起こした.増悪はいずれも術後第6病日に生じた.増悪例と非増悪例の術前評価・術中管理・術後経過・病理所見を比較検討した.増悪した2症例では末梢血白血球数,血清KL-6が高く,動脈血酸素分圧,肺活量,1秒量が低い傾向がみられた.また,術中100%酸素吸入時間が長く,術後胸腔ドレーン抜去が困難な症例,病理所見でfibroblastic fociが多く,細胞浸潤の強い症例で増悪が生じた.疾患活動性が疑われ,低肺機能の特発性肺線維症疑い症例の胸腔鏡下肺生検の施行については,このような危険因子の克服を視野に入れた再検討が必要と考えられる.
Received 平成14年6月13日
日呼吸会誌, 40(10): 806-811, 2002