対側肺にBronchiolitis obliterance organizing pneumoniaの合併が疑われた細気管支肺胞上皮癌の1例
榎本 紀之1) 井田 雅章1) 藤井 雅人1) 野木村 宏1) 須田 隆文2) 千田 金吾2) 中村 浩淑2)
〒421-0493 榛原郡榛原町細江2887-1 1)榛原総合病院呼吸器科 〒431-3192 浜松市半田山1丁目20番1号 2)浜松医科大学第2内科学講座
症例は50歳女性,平成12年4月の検診において胸部X線上の異常陰影を指摘され,精査のため当科へ入院となった.胸部CT写真では右肺上葉に中心部の浸潤影と周囲のスリガラス様陰影から成るφ3cm大の濃度上昇域を認めた.また左肺下葉に内部不均一な浸潤影とスリガラス様陰影を認めた.経気管支鏡的生検により右肺陰影は肺腺癌と診断されたが,左肺陰影は特異的所見が得られず,BOOP(Bronchiolitis obliterance organizing pneumonia)や肺腺癌の一亜型である細気管支肺胞上皮癌(Bronchiolo alveolar carcinoma:BAC)の転移などが疑われた.鑑別のためステロイド短期投与を行い左肺陰影はほぼ消失したため右肺上葉切除術を施行し得た.肺癌の対側肺に出現するBOOPは稀であり手術適応の有無について診断に苦慮した症例であった.診断や精査が困難な症例には腫瘍性病変との鑑別のため短期ステロイド投与は有効な手段であると考えられた.
Received 平成14年2月19日
日呼吸会誌, 40(10): 827-831, 2002