血栓塞栓症を合併した肺癌症例の臨床的検討
金本 幸司 松野 洋輔 籠橋 克紀 佐藤 浩昭 大塚 盛男 関沢 清久
〒305-8575 茨城県つくば市天王台1-1-1 筑波大学付属病院臨床医学系呼吸器内科
血栓塞栓症を合併した肺癌症例の臨床的検討を行った.1988年1月から2000年12月までに当科に入院となった肺癌患者649例中,12例(1.8%)に13エピソードの血栓塞栓症の合併を認めた.男性8例,女性4例で平均年齢は63歳であった.組織型は腺癌が296例中9例で,非腺癌例との間に統計学的有意差を認めた(p=0.042).臨床病期は,I~IIIA期例とIIIB期以上の進行期例間で合併の比率に有意差を認めなかった.血栓塞栓症発症時期は,肺癌診断に先行した例が5例(38.5%)認められた.血栓塞栓症合併に伴う症状の発現を13例中11例(84.6%)に認めた.治療として9例に抗凝固療法が行われ,8例で増悪回避が得られた.治療に伴う副作用は認めなかった.血栓塞栓症発症からの平均生存期間は22.4週と不良であったが,増悪回避例の死因は殆ど癌死であった.抗凝固療法は血栓塞栓症増悪の回避に有効であった.
Received 平成14年4月17日
日呼吸会誌, 40(11): 863-868, 2002