肺胞出血を伴った壊血病の一例
荒金 和美 北浦 奈由 北田 修 中村 仁 宮田 茂 陣 祥子 長澤 奈美子 竹中 乃里子 中込 隆之 栗林 康造 松山 知弘 杉田 實
〒663-8501 西宮市武庫川町1-1 兵庫医科大学総合内科・呼吸器部門
症例は53歳男性.平成11年2月14日,慢性腎不全に対して死体献腎移植を施行.その後3月初旬頃より喀血が出現・増悪する為,当科転院となった.当科入院時,約1カ月前に施行された術前処置用の筋肉注射の部位に皮下出血が残存しており,両眼球結膜下出血,四肢には皮下出血斑が数個認められた.入院時検査成績では出血凝固能に異常は無く,出血・凝固時間の延長も認められなかった.以上から,血管壁に出血の原因があると判断し,ビタミンC投与を行った所,翌日より喀血は劇的に改善し,数日で消失した.治療前の血清中のビタミンCは0.2μg/mlと著明な低値を示していた.本症例は,慢性腎不全の為,長期に亘り生野菜,果物などの食事制限を受けており,慢性的なビタミンC欠乏状態であったと考えられ,そこへ手術の侵襲,術後に使用したステロイドなどが壊血病発症の契機となったと考えられた.
Received 平成14年1月24日
日呼吸会誌, 40(12): 941-944, 2002