Mycobacterium abscessusの感染を合併した外因性リポイド肺炎の1例
松永 伸一*1) 倉島 篤行1) 永井 英明1) 赤川 志のぶ1) 町田 和子1) 四本 秀毅1) 毛利 昌史1) 蛇澤 晶2)
〒164-0001 東京都中野区中野5-44-7 *現 中野共立病院 1)国立療養所東京病院呼吸器内科 2)同 臨床検査科
症例は64歳の男性.93年10月,胃癌のため胃全摘術が施行され,術後より5-FUの内服が開始された.自覚症状はなかったが,96年3月28日の胸部レントゲン写真にて間質性肺炎と診断され,プレドニゾロン1日60mgの内服が開始された.しかし,次第に咳,白色痰が増え,5月下旬から新たな浸潤影が出現し,6月21日の痰の塗抹検査でガフキー4号が検出され当院に紹介入院となった.入院後抗酸菌はMycobacterium abscessusであることが判明した.また,95年6月から下剤として就寝前に流動パラフィンを内服していたことが明らかになった.現在,我が国では油性の下剤や点鼻薬を使うことが少なく,これらを原因とした外因性リポイド肺炎は極めて稀である.そして,パラフィンの油性成分がM. abscessusの病原性を強め,M. abscessusの感染の成立に強く影響したと思われる.
Received 平成14年1月16日
日呼吸会誌, 41(1): 14-18, 2003