眼窩内転移による症状を初発として発見された原発性肺癌の1例
森 英恵 前川 直子 里田 直樹 大塚 直紀 酒井 直樹 福瀬 達郎
〒520-8511 滋賀県大津市長等1-1-35 大津赤十字病院呼吸器科
症例は55歳男性.複視を主訴に当院来院,視力低下を伴う右動眼神経麻痺を認め,頭部MRI上右眼窩内腫瘍を確認,精査加療目的で入院となった.入院時胸部X線写真上,右肺門部に異常陰影があり,胸部CT検査では右S6に径4cm大の腫瘍を認めた.経気管支鏡生検で低分化型腺癌と診断を得,全身検索では腹部臓器や脳に転移はなく多発性骨転移を認めた.肺癌(cT4N2M1)Stage IVと診断,眼窩内腫瘍は転移巣と判断した.治療法として化学療法,放射線療法を選択し,眼症状には改善を認めたが,原発巣の進行は抑えられず入院後約3カ月で死亡の転帰を辿った.眼窩内転移をきたした原発性肺癌の症例は極めて稀であり本邦では17例目の報告となる.
複視 動眼神経麻痺 眼窩内転移 眼窩先端部症候群 原発性肺癌
Received 平成14年4月22日
日呼吸会誌, 41(1): 19-24, 2003