気管支鏡下生検で腫瘍壊死部分に真菌腐生を認めた4例
馬庭 厚1) 田口 善夫1) 種田 和清1) 田中 栄作1) 井上 哲郎1) 加藤 晃史1) 櫻本 稔1) 水口 正義1) 前田 勇司1) 寺田 邦彦1) 野間 恵之2) 小橋 陽一郎3)
〒632-8552 奈良県天理市三島町200番地 1)(財)天理よろづ相談所病院呼吸器内科 2)同 放射線部 3)同 病理
我々は1984年12月から1998年6月までに気管支鏡検査にて腫瘍壊死部分に真菌腐生を認めた4例を経験した.いづれも病歴,画像から肺癌を疑って気管支鏡検査を行い,肉眼的にポリープ状腫瘍を確認し生検を行った.当初それらの中には肺癌の所見はなく壊死組織が大半を占め,その中に腐生する真菌を同時に確認した.それらは鏡検や培養,PCR法を参考に3例がアスペルギルス,1例がムーコルと考えられた.これらのうち2例は肺癌と臨床診断し治療を先行させた.各々気管支鏡検査を複数回施行し,いづれも肺癌の診断を得た.肺癌組織内部に形成された空洞に真菌が発育することは広く知られているが,これら4例は気管支内腔に突出した腫瘍表面に真菌を認めた.4例とも真菌に対する治療は行わず,また経過上その感染症が問題になることはなかった.肺癌が疑われる症例では真菌が検出されても悪性細胞の確認と,その後の肺癌治療を念頭に診療することが重要であると考えられた.
Received 平成14年7月16日
日呼吸会誌, 41(1): 39-43, 2003