下垂体茎転移による尿崩症を初発症状とした肺腺癌の1例
加藤 哲朗 家城 隆次 橋元 恵美 齋藤 恵理香 太田 智裕 湯浅 和美 井口 万里 岡村 樹 澁谷 昌彦
〒113-0021 東京都文京区本駒込3-18-22 東京都立駒込病院呼吸器内科
症例は59歳女性.2001年4月7日突然多飲多尿をきたし,近医受診.当初,心因性多尿と考えられたが,頭部MRIにて多発性の結節影と下垂体茎の腫大を認めた.また胸部CTでは縦隔リンパ節の腫大を認め,精査加療目的に当院に紹介され入院.各種検査の結果,右肺尖部原発腺癌の下垂体茎転移による尿崩症と診断された.5月31日より全身化学療法・放射線療法(全脳照射)を開始した.原発巣・転移巣はやや縮小したが,尿崩症は改善しなかった.肺癌は遠隔転移巣の症状を初発症状とすることは多いが,下垂体茎転移による尿崩症を初発症状とすることは稀であるため報告すると共に,これまでの報告例をまとめ,臨床的な特徴について検討した.
Received 平成14年9月6日
日呼吸会誌, 41(1): 48-53, 2003