気管支喘息の気道内凝固について
川田 博* 桂 秀樹+ 上村 光弘 豊田 恵美子 工藤 宏一郎
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-21-1 国立国際医療センター呼吸器科 *現国立療養所南横浜病院 +都立老人医療センター呼吸器科
気管支喘息の気道内凝固の特徴を明らかにするために,気管支喘息発作,安定喘息,慢性気管支炎,健常者の喀痰中の凝固線溶を検討した.喘息発作ではアルブミン,Thrombin antithrombin III complex(TAT),TATとD-dimer(DD)の比(TAT/DD)が他の3群に比べ有意に上昇していた.免疫染色上,喘息発作時の喀痰は他の喀痰に比べフィブリンが陽性に染色される傾向にあった.喘息発作及び安定喘息では,アルブミンとTATあるいはTAT/DDの間に正の相関が認められたが,健常者では認められなかった.以上より喘息発作では気道内への血漿の漏出亢進,凝固亢進が示唆されフィブリン形成に関与すると考えられた.さらに気管支喘息では,血漿漏出の指標であるアルブミン濃度と凝固の指標であるTATやTAT/DDの間に相関を認めたが,健常者では認めなかったことから,両者では気道内凝固が異なる機序で制御されていることが示唆された.
Received 平成14年7月26日
日呼吸会誌, 41(9): 620-625, 2003