肺炎と誤診された特発性下大静脈血栓症による肺塞栓症の1例
金子 猛1)2) 樋口 晃生1) 瀧井 孝敏1) 石ヶ坪 良明2)
〒253-0042 茅ヶ崎市本村5-15-1 1)茅ヶ崎市立病院内科 〒236-0004 横浜市金沢区福浦3-9 2)横浜市立大学医学部第1内科
症例は73歳,男性.発熱,咽頭痛と咳嗽のため近医を受診,上気道炎の診断で投薬を受けるも発熱が続くために当院を紹介受診.胸部X線写真で右中肺野に浸潤影を認めたため,肺炎の診断で入院となった.入院後抗生剤の投与により,自覚症状,炎症所見および胸部X線写真の陰影も改善した.肺炎がほぼ治癒したとの判断で退院を予定していたが,血液検査で肝機能値異常を認めたため腹部CTを施行したところ,偶然下大静脈血栓症が発見された.これにより右中肺野の浸潤影は肺梗塞によって生じた可能性が疑われ,胸部CTと肺血流シンチグラフィーを施行した.前者では右肺動脈下幹枝に塞栓子,後者では右中下葉に広範な欠損が認められたため,下大静脈血栓症による肺塞栓症と診断された.再発防止目的で待機的に下大静脈フィルターを留置し,その後は新たな肺塞栓症の再発を認めていない.
肺血栓塞栓症 肺梗塞 下大静脈血栓症 下大静脈フィルター挿入
Received 平成14年4月26日
日呼吸会誌, 41(9): 636-640, 2003