若年女性に舌癌手術後に発症し,肺転移との鑑別に苦慮した肺癌の1例
川田 一郎1) 寺嶋 毅1) 森下 鉄夫1) 田中 陽一2) 笠原 清弘3) 矢島 安朝3) 野間 弘康3)
〒272-8513 千葉県市川市菅野5-11-13 1)東京歯科大学市川総合病院内科 2)同 臨床検査科 3)東京歯科大学千葉病院口腔外科学第1講座
症例は喫煙歴のある33歳女性.舌癌根治手術の約8カ月後,右下肺野に腫瘤状病変を認めた.病変の組織型は舌,肺ともに扁平上皮癌であったことより肺病変に関して転移性肺癌と原発性肺癌との鑑別が問題点であった.免疫染色の結果を考慮しても舌癌肺転移と重複癌との鑑別はなお困難であった.舌癌の病理病期がT2 N0 M0(stage II)であったこと,肺病変出現時に舌癌の局所再発や頸部リンパ節腫脹を認めなかったこと,肺病変が単発性であったことより肺病変を原発性肺癌と診断した.化学療法と肺野への放射線療法を施行したが治療効果を認めず肺癌診断の3カ月後に永眠した.転移との鑑別に苦慮した1例であった.
Received 平成14年5月16日
日呼吸会誌, 41(9): 641-645, 2003