気管支粘膜病変と全身の血管炎が顕著であったPR3-ANCA陰性ウェゲナー肉芽腫症疑いの1例
小山 里香子1) 本間 栄1) 坂本 晋1) 川畑 雅照1) 岸 一馬1) 元井 紀子2) 中田 紘一郎1)
〒105-8470 東京都港区虎ノ門2-2-2 1)虎の門病院呼吸器内科 2)同 病理部
症例は72歳女性,主訴は乾性咳嗽と発熱.他院の胸部CTで右肺S10の椎体に接する結節性病変を指摘され,抗生剤が無効であったことから器質化肺炎と診断された.プレドニゾロン20 mg/日の投与後,咳嗽,発熱,炎症反応の改善が認められたが完治しないため当院に精査加療目的で入院となった.胸部CT上,区域気管支壁の肥厚以外明らかな肺野病変はなく,血清PR3-ANCA陰性,MPO-ANCA陽性であった.両側上強膜炎,両側眼底血管炎,気管支粘膜病変が顕著で,気管支粘膜生検・腎生検で血管炎を認め全身型ウェゲナー肉芽腫症(WG)疑いと診断した.プレドニゾロン60 mg/日,シクロホスファミド50 mg/日,ST合剤4 g/日を併用投与後,炎症反応,臨床症状は速やかに改善した.WGにおいて,気管支粘膜病変は16~55%に認められるが,MPO-ANCA単独陽性は14.3%にしか存在しない.本症例はPR3-ANCA陰性で生検組織でも定型的肉芽腫はなく,全身の血管炎が顕著であった稀少なWG症例と考えられた.
ウェゲナー肉芽腫症 PR3-ANCA陰性 MPO-ANCA陽性
Received 平成14年12月3日
日呼吸会誌, 41(9): 646-650, 2003