Lemierre症候群の1例
〒116-8567 東京都荒川区西尾久2-1-10 東京女子医科大学第2病院内科
症例は30歳の女性.発熱,咽頭痛を主訴に当院耳鼻科を受診し,扁桃周囲膿瘍と診断され,膿瘍扁桃摘出術を施行された.術後も発熱が持続し,胸部X線写真にて両肺に多発性の空洞と胸水を認めたため当科に転科となった.胸部CTでは両肺野に多発性の厚壁の空洞を,頸部CTでは左内頸静脈の閉塞を認めた.以上より,扁桃周囲膿瘍を契機に内頸静脈の血栓性静脈炎を合併し,さらに肺に多発性のseptic emboliに進展したLemierre症候群と診断した.転科後より,CLDMとCFPMの併用で治療を開始後,漸次空洞は消退した.治癒後に施行した頸部エコーで左内頸静脈の血流の途絶を認めた.近年,口腔咽頭領域の感染症は強力な抗生剤の開発によりほとんどが良好な臨床経過を辿る.しかし,時に本症を合併し致死的な結果を招くことがあり,日常診療においては常に念頭におくべき疾患と考えられた.
Received 平成15年1月6日
日呼吸会誌, 41(9): 651-654, 2003