COPDの病因・病態
北海道大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野
COPDの基本病態である気流制限は,末梢気道病変(閉塞性細気管支炎)と肺実質の破壊性病変(肺気腫)がさまざまな割合で混在して起こる.このような病変形成の基本は喫煙などの吸入物質によって引き起こされる肺の慢性炎症である.それに伴うプロテアーゼ・アンチプロテアーゼ不均衡とオキシダント・アンチオキシダント不均衡のプロセスが気道炎症を持続・増悪させる一方で,末梢気道のリモデリングおよび狭窄と肺実質の破壊を引き起こす.炎症細胞としては,好中球やマクロファージに加えてCD8陽性Tリンパ球やある場合には好酸球も関与する.炎症のメディエーターとしてのサイトカインやケモカインも重要である.このように病因や病態が十分明らかになっているように思われるCOPDであるが,喫煙による肺の炎症が持続する機序,ステロイドがCOPDの自然経過を改善しない理由,一部の喫煙者にだけ肺気腫が発症する理由,遺伝因子と環境因子の相互作用,肺病変修復の可能性など,残された研究課題も多い.
日呼吸会誌, 42(8): 700-704, 2004