気管支肺胞洗浄で経過を追うことが出来た薬剤性肺炎の1例
福居 嘉信 内山 雷太 細川 剛 山口 悦郎 地主 英世 檜澤 伸之 西村 正治
〒060-8638 札幌市北区北15条西7丁目 北海道大学医学部第一内科
症例は30歳女性.主訴は発熱と労作時呼吸困難.胸部X線で両側中下肺野にすりガラス様陰影が認められた.経過から塩酸ミノサイクリンによる薬剤性肺炎が疑われた.休薬にて自覚症状,画像所見ともに改善した.発症4日目の気管支肺胞洗浄液(BALF)では,好中球33%,好酸球14%と増加していた.11日目のBALFでは好中球0%,好酸球8.9%,35日目には好中球0%,好酸球2%となった.逆にリンパ球分画は発症4日目の3%よりも発症11日目に37%と著しい上昇を認め,発症35日目には11%とほぼ正常化した.末梢血でも発症3日目に白血球数および好中球数の増加が認められた.BALF中および血中サイトカインの測定から,好中球の増加にはTNF-αとIL-8が,好酸球の増加にはIL-5が関与したと考えられた.薬剤性肺炎には,急性期にBALFおよび末梢血で一過性の好中球増多を生じる例がある.
薬剤性肺炎 塩酸ミノサイクリン セラペプターゼ レバミピド 肺好中球増加
Received 平成15年9月10日
日呼吸会誌, 42(8): 743-748, 2004