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書誌情報

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症例

肺癌術後の対側肺からの急性増悪を確認しえたidiopathic pulmonary fibrosis/usual interstitial pneumoniaの1剖検例

坂本　晋1）  本間　栄1）  川畑　雅照1）  河野　匡2）  関　邦彦3）  中田紘一郎4）  吉村　邦彦1） 

〒105-8470　東京都港区虎ノ門2-2-2 1）虎の門病院呼吸器科 2）同　呼吸器外科 3）同　病理部 4）東邦大学医学部呼吸器内科

要旨

肺癌の術後，対側肺からの急性増悪を確認しえたidiopathic pulmonary fibrosis/usual interstitial pneumonia（IPF/UIP）の1例を報告する．症例は72歳男性．1999年（71歳時）労作時呼吸困難の精査の結果，IPF/UIPの慢性安定期と診断．その後，経過観察中の2000年7月，胸部CTで左S10に腫瘤病変を認めたため精査目的で入院．IPF/UIPに合併した肺癌を疑い，8月3日左開胸左肺下葉切除，縦隔リンパ節郭清術を施行．術後診断はIPF/UIP合併高分化型扁平上皮癌，T1N0M0 stage IAであった．術後第6病日より呼吸困難が出現し，低酸素血症（PaO2 48 mmHg），および胸部CTで初め対側肺から始まり，後に両側肺に及ぶground glass opacityの拡がりを認め，IPF/UIPの急性増悪と診断した．ステロイドパルス療法，シクロスポリンなどの治療に反応せず，術後82病日呼吸不全のため死亡した．剖検肺所見は蜂巣肺と硝子膜形成を伴う胞隔炎が広範に認められるdiffuse alveolar damageで，病理学的にも急性増悪と診断された．本症例では術中，とくに分離肺換気により高濃度酸素暴露をうけた対側肺から増悪が生じたことから，高濃度酸素投与および手術侵襲がIPF/UIPの急性増悪の主要な誘因になったと考えられた．

キーワード

特発性肺線維症  急性増悪  肺癌  高濃度酸素 

Received 平成15年12月18日

日呼吸会誌, 42(8): 760-766, 2004

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