肥満に対して投与された防風通聖散による薬剤性間質性肺炎が疑われた1例
鈴木 慎太郎1)2) 田中 明彦1)2) 新井 理之1)2) 足立 満2)
〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8 1)せんぽ東京高輪病院内科 2)昭和大学第1内科
症例は64歳女性.減量目的に防風通聖散を内服し,約2カ月後から労作時呼吸苦・咳嗽・発熱を認めた.以後症状が増悪し,当院に入院した.胸部写真で両肺野にびまん性陰影を認め,血清LDH値,KL-6値の上昇,低酸素血症を認めた.気管支肺胞洗浄液でリンパ球優位の炎症細胞数の増加,経気管支肺生検では間質における炎症所見が見られた.同剤を中止し,約2週間で症状・検査所見が軽快した.同剤に対する末梢血リンパ球刺激試験は陰性だったが,防風通聖散は間質性肺炎をきたす黄ごんや甘草などを含有し,内服により可逆性の薬剤性間質性肺炎が発症したと考えられた.漢方薬は日本では合剤として処方されることが殆どであり,含有成分を把握したうえで投与すべきである.長期投与する際には,問診や胸部診察,定期的な血液・画像検査による注意深い経過観察が必要である.
薬剤性間質性肺炎 防風通聖散 漢方薬 黄ごん(オウゴン) 甘草(カンゾウ)
Received 平成16年2月5日
日呼吸会誌, 42(8): 777-781, 2004