臨床的に上腕神経炎に続発したと思われた両側横隔膜麻痺の1例
門脇 麻衣子1) 水野 史朗1) 上坂 太祐1) 梅田 幸寛1) 出村 芳樹1) 飴島 慎吾1) 宮森 勇1) 石崎 武志2)
〒910-1104 福井県吉田郡松岡町下合月23-3 1)福井大学医学部第3内科 2)看護学科健康科学
【症例】55歳,男性.約2週間前から徐々に増悪する両肩の疼痛と臥位で増悪する呼吸困難を自覚したため当院受診した.【現症】身長169 cm,体重78 kg,臥位にて奇異性呼吸を認め,臥位になって20秒ほどでSpO2が94から79%へと低下した.【検査所見】胸部画像所見では,両肺の容積減少と両側下葉の無気肺を認めた.呼吸機能検査では拘束性換気障害を認め,経皮的頸部横隔神経電気刺激試験にて潜時の延長と活動電位の低下をみとめた.【経過】両側横隔膜麻痺と診断し,鼻マスク陽圧人工呼吸療法を施行したところ,症状の著明な改善と動脈血液ガス分析の改善を認めた.【考察】他の上肢の神経症状を伴わなかったが,臨床経過から,両側横隔膜麻痺の原因として上腕神経炎が考えられた.上腕神経炎は稀な疾患ではないものの,肩関節炎と誤診される可能性がある.両側横隔膜麻痺もまた,心不全などと誤診される可能性もあり,臨床的に有用と考え,文献的考察を加えて報告する.
特発性両側横隔膜麻痺 奇異性呼吸 上腕神経炎 非侵襲的陽圧呼吸療法
Received 平成17年1月6日
日呼吸会誌, 43(9): 513-517, 2005