肺高血圧症のCT所見(特に原発性肺高血圧症と慢性肺血栓塞栓症の鑑別を中心に)
井上 征雄1) 谷本 伸弘1) 佐藤 徹2) 栗林 幸夫1)
〒160-8582 東京都新宿区信濃町35 1)慶應義塾大学医学部放射線診断科 2)慶應義塾大学医学部循環器内科
肺高血圧症の治療方針決定にあたり,原因疾患の鑑別診断が重要である.今回,我々は53症例の肺高血圧症患者の胸部CT(computed tomography)所見から原因疾患の鑑別診断を試みた.原因疾患として頻度の高い原発性肺高血圧症(25例)と慢性肺血栓塞栓症(18例)を比較すると,前者ですりガラス様陰影(ground grass opacity)がびまん性に分布するのに対して,後者では胸膜下優位の分布を示した.しかしながら,原発性肺高血圧症においてすりガラス様陰影の分布と肺動脈平均圧および肺血管抵抗との相関関係は証明できなかった.また,慢性肺血栓塞栓症例ではモザイクパターン(mosaic attenuation pattern)を呈しやすく(p=0.048),小葉間隔壁の肥厚は原発性肺高血圧症例の一部に見受けられた(16%)が,慢性肺血栓塞栓症では皆無であった.画像所見と臨床所見との対比はさらなる検討が必要である.
Received 平成17年8月29日
日呼吸会誌, 44(7): 485-491, 2006