胃潰瘍穿孔による胃胸腔瘻の1例
〒933-0806 高岡市二塚387-1 済生会高岡病院内科
関節リウマチのためNSAIDと副腎皮質ステロイド,免疫抑制剤を長期内服中の65歳,女性.約1週間前からの胸部違和感を経て突然の激烈な背部痛で発症.前胸部痛,呼吸困難も出現し,救急車で搬送された.胸部単純X線上,左気胸と縦隔偏位を認め,左胸腔ドレナージを施行.ドレナージチューブ内に食物残渣を認めたため上部消化管造影検査を行ったところ,胃胸腔瘻を認めた.手術時,胃体上部前壁にピンホール大潰瘍穿孔があり,横隔膜腱中心への癒着と,同部位での胸腔内への交通が認められた.穿孔部の切除標本では,穿孔部辺縁に線状潰瘍瘢(ul-IV-S)と再生粘膜を伴っており,慢性潰瘍が先行していたと考えられた.胃潰瘍が直接横隔膜と胃の癒着部を通じて胸腔内に穿孔し,胃胸腔瘻を形成した胃胸腔瘻例は極めて稀であり,NSAIDと副腎皮質ステロイドの併用の関与が考えられた.
Received 平成17年9月8日
日呼吸会誌, 44(9): 620-624, 2006