大量喀血にて発症し気管支動脈塞栓術を施行した原発性気管支動脈蔓状血管腫の1例
楢戸 律子1) 榎本 達治1) 小野 啓資2) 馬場 久美子1) 駒崎 義利1) 上村 なつ1) 齊藤 均1) 渋谷 泰寛1) 横須賀 哲哉3) 小林 利子3) 中村 清一1)
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿2-34-10 1)東京都立広尾病院呼吸器科 2)日本医科大学内科学第4講座 3)東京都立広尾病院外科
大量喀血にて発症した原発性蔓状血管腫を経験した.症例は56歳女性.仕事中に喀血し当院に救急搬送された.気管支鏡施行中も右中間気管支幹を閉塞する正常粘膜におおわれたポリープ様突出病変周囲より大量出血を認めた.片肺分離肺換気下にて一時的に止血後,気管支動脈造影を施行した.右気管支動脈本幹の著明な拡張,下葉枝末梢の拡張・蛇行を認め,気管支動脈蔓状血管腫と診断した.同部位をゼラチンスポンジ,金属コイルで塞栓した.6カ月後CT-A(CT-アンギオ)でも再発は認めず,その後1年の経過で再喀血を認めていない.本症例のような大量喀血例では肺葉切除のような手術療法を行う報告が多いが,シャントを認めない原発性の場合には,気管支動脈塞栓術を考慮すべきである.
大量喀血 気管支鏡 分離肺換気 気管支動脈蔓状血管腫 気管支動脈塞栓術
Received 平成17年11月2日
日呼吸会誌, 44(9): 641-646, 2006