きのこ工場にて多量の粉塵吸入後に発症したアスペルギルス肺炎の1剖検例
〒943-0192 新潟県上越市新南町205 新潟県立中央病院内科
アルコール性肝障害の既往を持つ40歳代の男性が,進行性の呼吸困難と両肺にびまん性に拡がる浸潤影のため,紹介され入院した.入院の2週間前,エノキダケ栽培工場で腐敗した大量のエノキダケを撤去する作業をおこない,その際に多量の浮遊する粉塵を吸入していた.血中β‐Dグルカンは著明に高値であり,血中アスペルギルス抗原が陽性であった.エノキダケ栽培工場の空中落下菌よりAspergillus fumigatus(A. fumigatus)が培養され,同菌を多量に吸入したために発症したアスペルギルス肺炎と診断された.抗真菌薬の併用治療がおこなわれたが,奏効せず呼吸不全で死亡した.剖検ではA. fumigatusの菌糸を含む多発膿瘍を全肺に認め,組織学的には多核巨細胞を伴う肉芽腫性反応を特徴としたが,肺以外にはアスペルギルスの浸潤は認めなかった.
アスペルギルス肺炎 Aspergillus fumigatus アルコール性肝障害 有機粉塵吸入
Received 平成17年11月17日
日呼吸会誌, 44(9): 659-664, 2006