血胸で発症し診断に苦慮した肉腫型悪性胸膜中皮腫の1剖検例
小倉 裕美1) 猶木 克彦1) 富樫 郁子1) 国兼 浩嗣1) 岡本 浩明1) 檜田 直也1) 成田 裕介1) 加瀬 昌弘2) 大沢 宏至2) 大森 隆広2) 渡辺 古志郎1)
〒240-8555 横浜市保土ヶ谷区岡沢町56 1)横浜市立市民病院呼吸器科 2)同 呼吸器外科
症例は61歳男性.胸部圧迫感を主訴に来院.血胸を認め,胸腔ドレナージ後のCTで両肺野に多発性結節影と軽度の胸膜の肥厚を伴う胸水貯留を認めた.開胸胸膜生検の病理組織所見で肉腫様増殖を示す腫瘍を認めたが明らかな上皮性パターンは認めず,免疫染色では当初,ケラチンおよびカルレチニンは陰性で筋原性マーカーであるデスミンが陽性であり横紋筋肉腫が疑われた.対症療法を行い約2カ月で全身状態の悪化で死亡,病理解剖での肉眼的進展型式から胸膜中皮腫が強く示唆され,再度,胸膜生検組織のケラチンおよびカルレチニンの免疫染色を施行したところ陽性所見を認め,肉腫型の悪性胸膜中皮腫と診断した.肉腫型胸膜中皮腫と横紋筋肉腫の鑑別は免疫染色によりなされるが,しばしば鑑別困難で診断に苦慮することがあると考えられた.
Received 平成17年8月11日
日呼吸会誌, 44(10): 689-694, 2006