両肺尖部に空洞を呈した慢性肺コクシジオイデス感染症の1例
森野 英里子1) 仲 剛1) 泉 信有1) 吉澤 篤人1) 川名 明彦2) 豊田 恵美子1) 小林 信之1) 工藤 宏一郎2)
〒162-8655 東京都新宿区戸山1-21-1 1)国立国際医療センター呼吸器科 2)国立国際医療センター国際疾病センター
コクシジオイデス症は米国南西部を中心とした半乾燥地域の風土病で,土壌に生息するCoccidioides immitisを吸入することで感染,発症する.本邦での報告は稀で年に数例である.今回我々は慢性肺コクシジオイデス症の1例を経験したので報告する.症例は32歳男性.2003年11月末にアリゾナへ渡航しゴルフを行った.その1カ月後より咳嗽,血痰が出現し前医を受診,血液検査で好酸球増多,胸部単純写真にて両肺尖部の空洞性病変を指摘された.肺結核疑いにて抗結核薬治療を3カ月施行されるも効果なく,当院紹介され血清学的,細菌学的にコクシジオイデス感染症と診断された.空洞内には菌球形成が見られ,通常生体内で認められる球状体ではなく,糸状菌の形で菌体が検出された珍しい症例であった.Fluconazoleにより病状は一過性に改善したが,再び増悪傾向を認めたためAmphotericin-Bを使用し,奏効した.好酸球増多は病勢と相関し,治療効果の一指標となった.
慢性肺コクシジオイデス感染症 空洞性病変 菌球 好酸球増多 菌糸
Received 平成17年10月17日
日呼吸会誌, 44(10): 711-715, 2006