免疫抑制療法中に発症しボリコナゾールが奏効した肺・大内転筋内アスペルギルス症の1例
一安 秀範 山村 明子 本田 美津子 岡本 真一郎 津守 香里 岡本 竜哉 佐藤 圭創 松本 充博 興梠 博次
〒860-8556 熊本県熊本市本荘1-1-1 熊本大学大学院医学薬学研究部呼吸器病態学講座
我々は,アゾール系新規抗真菌剤であるボリコナゾールが有効であった侵襲性アスペルギルス症を経験したので報告する.症例は74歳女性.2004年12月に乾性咳嗽・息切れの精査目的にて当科第1回目入院し,過敏性肺炎の診断にてステロイドとシクロスポリンAによる治療を開始した.次第に自覚症状や臨床所見の改善を認めていたが,2005年6月に血中β-Dグルカンが1,287 pg/mlと上昇し第2回目入院となった.胸部CT上,右S1に20 mm大の結節影を認め,67Gaシンチでは左大腿部に異常集積を認めた.造影CT所見から左大内転筋内の膿瘍が疑われエコー下での穿刺・生検にてアスペルギルス感染症と診断した.ミカファンギンとイトラコナゾールによる治療を約4週間施行したが,治療反応性に乏しくボリコナゾールに変更した.その後血中β‐Dグルカンは減少し,さらにCT上,右肺野の結節性陰影と筋肉内膿瘍は著明に縮小した.ボリコナゾールは難治性アスペルギルス感染症において有効性の高い薬剤の1つであると考えられた.
侵襲性アスペルギルス症 肺アスペルギルス症 筋肉内膿瘍 ボリコナゾール ステロイド治療 β‐Dグルカン
Received 平成17年12月16日
日呼吸会誌, 44(10): 754-760, 2006