肺癌における癌性髄膜炎の検討
須藤 淳子 本村 泰雄 栗本 太嗣 駒形 浩史 酒井 洋 米田 修一
〒362-0806 埼玉県北足立郡伊奈町小室818 埼玉県立がんセンター呼吸器科
2001年1月~2005年3月までに当センターに入院した原発性肺癌1,548例のうち,髄液細胞診あるいは造影脳・脊髄MRI所見で癌性髄膜炎と診断された37例を対象にレトロスペクティブな臨床検討を行った.組織型は腺癌が70%で最も多く,髄液細胞診陽性率は71%であった.肺癌診断から癌性髄膜炎診断までの期間は-2日~8年(中央値407日)で,髄膜炎診断からの生存期間は10~392日(中央値106日)であった.癌性髄膜炎の治療は患者の全身状態や原発巣の制御状態に応じて決定し,放射線治療,全身化学療法,補助療法が組み合わされた.髄膜炎発症後の化学療法ではgefitinibが多く用いられ,投与例の60%に病勢の安定を認め,うち1例(腺癌)は1年以上の長期生存が得られた.今後,癌性髄膜炎患者におけるQOLの向上や生存期間の延長を目指して,gefitinibを含め確立された治療を求めて更なる研究が行われるべきである.
Received 平成18年3月9日
日呼吸会誌, 44(11): 795-799, 2006