リドカイン吸入療法が奏効した妊婦難治性喘息の1例
齋藤 圭子 佐藤 長人 下野 暢隆 萩原 弘一 金澤 實 永田 真
〒350-0495 埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38 埼玉医科大学病院呼吸器内科
妊婦難治性喘息患者において,リドカイン吸入療法が奏効した1例を経験した.症例は27歳女性,既往に小児喘息があり,2003年4月より当科外来に通院していたが種々の薬物投与に加えベタメタゾン1.5 mg/日の維持量を要していた.2004年2月9日に発作にて入院.この時点で妊娠11週目であった.β2刺激薬および抗コリン薬の吸入,ベタメタゾンとテオフィリンの点滴静注,高用量吸入ステロイド,ロイコトリエン拮抗薬を投与したが,咳と喘鳴の改善が乏しく,PEFRの低下と低酸素血症も持続していた.そこでMayo Clinicの方法に準じてリドカイン吸入療法を導入した.吸入開始後より咳症状,ピークフローが著明に改善し,ステロイドの減量が可能となり,妊娠30週で帝王切開にて出産に至った.リドカイン吸入療法は難治性喘息治療の補助療法として期待できるとともに妊娠中の患者にも安全に施行することが示せた.
Received 平成18年1月16日
日呼吸会誌, 44(11): 828-832, 2006