レジオネラ肺炎が診断契機となったHTLV-I関連肺疾患の1例
高久 洋太郎1) 高柳 昇1) 徳永 大道1) 倉島 一喜1) 杉田 裕1) 河端 美則2)
〒360-0105 埼玉県大里郡江南町大字板井1696 1)埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科 2)同 病理科
症例は,46歳男性.両親が長崎県出身.自宅に24時間風呂あり.26年前より咳,2年前から労作時呼吸困難感を自覚していた.今回,発熱・咳・呼吸困難の増悪を主訴に来院した.胸部画像所見で両側肺野に浸潤影を認め,喀痰培養でレジオネラ・ニューモフィラ血清型3を検出した.抗菌薬により症状は軽減したが,治療後にも肺野に異常陰影が残存,呼吸機能異常も示した.残存した肺野病変が,26年来の咳,2年前からの労作時呼吸困難感の原因と考え精査した.末梢血中に花弁様核を有する異型リンパ球を認め,抗HTLV-I抗体陽性,遺伝子解析でHTLV-IプロウイルスDNAの単クローン性の組み込みが確認され,成人T細胞白血病(ATL)くすぶり型と診断した.胸腔鏡下肺生検にて,構造破壊を伴った間質の線維性肥厚と花弁様核を有する異型リンパ球浸潤を認めた.肺野病変は,HTLV-I関連肺疾患ならびにATL細胞浸潤と判断した.ATLに伴う肺感染症の原因微生物としてウイルス・抗酸菌・真菌などが知られているが,今回提示した症例はレジオネラ肺炎が診断契機となった.
レジオネラ肺炎 HTLV-I 成人T細胞白血病 HTLV-I関連肺疾患
Received 平成18年4月6日
日呼吸会誌, 44(11): 885-891, 2006