高度呼吸不全を呈した特発性肺線維症急性増悪におけるシベレスタットナトリウム使用成績と予後因子の検討
中村 万里 小倉 高志 宮沢 直幹 田川 暁大 小澤 聡子 綿貫 祐司 高橋 宏
〒236-0051 横浜市金沢区富岡東6-16-1 神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器科
2002年7月から2005年3月まで特発性肺線維症(IPF)急性増悪と診断,高度の呼吸不全を合併し人工呼吸器管理となり,好中球エラスターゼ阻害剤(シベレスタットナトリウム)を使用した10名の患者で,予後及び生存群と非生存群での予後因子の検討を行った.入院後180日目の生存で,生存群,非生存群でPaO2/FiO2(P/F),PEEP値,WBC数,CRP値の経時的変化,入院時血清中KL-6, SP-値を検討した.入院後180日目で,10名中4名が生存と良好な成績であった.生存群は入院後7日目でP/F, PEEP値,CRP値は改善(p<0.05),入院時の血清中のKL-6値,SP-D値は非生存群より低値であった(p<0.05).シベレスタットナトリウムは高度呼吸不全を合併したIPF急性増悪の治療で効果を期待される可能性があると思われた.血清中KL-6及びSP-D値が予後予測因子として有用であると考えられた.
特発性肺線維症 急性増悪 シベレスタットナトリウム KL-6 SP-D
Received 平成18年3月7日
日呼吸会誌, 45(6): 455-459, 2007