関節リウマチに合併した肺感染症の検討
高柳 昇 土屋 裕 徳永 大道 宮原 庸介 山口 昭三郎 斎藤 大雄 生方 幹夫 倉島 一喜 柳沢 勉 杉田 裕
〒360-0105 埼玉県熊谷市板井1696 埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器内科
関節リウマチに合併した肺感染症について,149例(平均年齢68.0歳,男性68例)を対象に検討した.RA発症年齢は57.2±15.2歳,RA罹患期間は10.9±11.5年であった.肺感染症の内訳は非結核性抗酸菌症59例(M. avium complex 50例,M. kansasii 4例,その他5例),肺炎46例,肺結核28例,肺アスペルギルス症12例,肺クリプトコッカス症5例,ニューモシスチス肺炎5例,肺膿瘍9例,気管支拡張症急性増悪7例,膿胸4例(重複あり)であった.そのうち,既存の肺疾患は,気管支拡張症急性増悪(100%),肺アスペルギルス症(91.7%),肺炎(87%),非結核性抗酸菌症(81.4%)で多く認めた.ステロイド剤が投与されている頻度が高かった肺感染症は肺結核(78.6%),肺炎(65.2%),肺アスペルギルス症(58.3%)であり,メトトレキサートではニューモシスチス肺炎(80%),肺クリプトコッカス症(40%),肺結核(28.6%)であった.TNFα阻害薬投与中の肺感染症は非結核性抗酸菌症・肺炎・肺結核・ニューモシスチス肺炎の各1例であった.肺膿瘍では基礎疾患に悪性腫瘍・糖尿病を合併していた症例がそれぞれ55.6%・22.2%あった.肺炎の原因微生物の第2位は緑膿菌であり,気管支拡張症急性増悪では,原因微生物が全例緑膿菌であった.関節リウマチに伴う肺感染症の危険因子として,免疫抑制剤(ステロイド剤・MTX・TNFα阻害薬),全身の基礎疾患のみならず既存肺疾患が関与している.肺感染症ごとにこれらの危険因子の関与の程度が異なっている可能性が高い.
Received 平成18年11月21日
日呼吸会誌, 45(6): 465-473, 2007