喀血にて発症した奇静脈瘤の1例
〒653-0013 神戸市長田区一番町2丁目4番地 神戸市立西市民病院呼吸器内科 1)現 岡山大学病院血液腫瘍呼吸器内科 2)現 神戸市立中央市民病院呼吸器内科
症例は64歳男性.喀血を呈し近医を受診したところ胸部X線写真にて腫瘤影を認め当院紹介となった.胸部造影CTでは腫瘍を疑わせる陰影はなく奇静脈が瘤状に拡張していた.また,上大静脈はペースメーカーが留置されており内腔の閉塞をきたしていた.気管支鏡検査を行ったところ気管支粘膜毛細血管が著明に拡張しており出血源と考えられた.静脈造影では,上大静脈は完全に閉塞し上肢及び頭部からの血流は側副血行路を介し奇静脈に合流していた.以上より本症例の発症機序として,上大静脈が閉塞し頭部・上肢の血流が側副血行路を介し奇静脈へ流入することで奇静脈瘤を呈したものと思われる.また,奇静脈の血流が増加することで気管支静脈の還流障害が生じその結果として気管支粘膜毛細血管の怒張および出血に至ったものと考えられた.奇静脈瘤の多くは無症状で偶発的に発見されており,喀血を呈した症例は稀であったため若干の文献的考察を加え報告する.
Received 平成18年10月23日
日呼吸会誌, 45(6): 479-482, 2007