長期間無症状で経過し,経気管支肺生検にて診断し得た肺放線菌症の1例
徳田 麗1) 片山 伸幸1) 中積 泰人1) 藤村 政樹2)
〒921-8105 金沢市平和町3丁目7番3号 1)金沢市立病院呼吸器科 2)金沢大学大学院細胞移植学呼吸器内科
症例は65歳男性.2005年の健診にて胸部異常陰影を指摘され,精査目的に当院を受診した.咳や血痰などの自覚症状は全くなかった.確認できた範囲では,2002年より胸部レントゲン写真上,左下肺の肺野濃度の上昇が認められ,年々拡大してきていた.気管支鏡検査にて,左B8, B9, B10に,気管支粘膜面の発赤腫脹と,入口部の狭窄が認められた.左B9からの経気管支肺生検の組織標本で,放線菌の菌塊と肉芽組織が認められ,肺放線菌症と診断された.症状の有無に関わらず,長期の経過をとる胸部異常陰影の鑑別診断として,常に本症も念頭に置くべきであると考えた.
Received 平成18年11月13日
日呼吸会誌, 45(6): 494-498, 2007