胸腔鏡下手術にて切除した胸腔内迷走神経より発生した神経鞘腫の1例
〒277-8567 千葉県柏市柏下163-1 1)東京慈恵会医科大学附属柏病院呼吸器内科 2)同 外科
症例は63歳,男性.2006年3月に胸部CT検査で縦隔腫瘍を指摘され精査,加療目的で同年4月に当院外科を受診した.胸部CTおよびMRI検査では右上縦隔に直径3 cm大の軟部組織濃度を示し中心部は造影にて不均一な増強効果を示す腫瘤を認めた.右上縦隔に発生した奇形腫を疑い同年7月に胸腔鏡下手術を施行した.腫瘍は右上縦隔に存在し反回神経分岐部末梢側の迷走神経より発生していた.病理組織学的診断は迷走神経鞘腫であった.縦隔腫瘍は発生部位と画像所見により鑑別診断が行われるが,本例は迷走神経鞘腫という稀な腫瘍であり術前診断は困難であった.本例では術後に反回神経麻痺が出現した.近年,縦隔腫瘍に対する胸腔鏡下手術は増加傾向にあるが,同腫瘍のような術後に神経障害が起こる可能性のある神経原性腫瘍では,術式の選択について今後は症例を集積して慎重に検討すべきである.
Received 平成18年11月13日
日呼吸会誌, 45(6): 499-502, 2007