プロピルチオウラシルが原因と考えられたMPO-ANCA関連肺胞出血の1例
中山 雅之 坂東 政司 小林 晃 細野 達也 辻田 章博 山沢 英明 大野 彰二 杉山 幸比古
〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1 自治医科大学呼吸器内科
症例は35歳女性.平成17年5月発熱,呼吸困難を主訴に当院を受診し,胸部単純X線およびCT検査でびまん性すりガラス状濃度上昇を認め,高度の呼吸不全をきたしていたため入院となった.貧血(Hb 5.2 g/dl)を認め,Myeloperoxidase-antineutrophil cytoplasmic antibody:MPO-ANCAが203EUと高値を示した.気管支肺胞洗浄液は鮮血色で,ヘモジデリン貪食マクロファージを認めたため肺胞出血と診断した.平成13年より甲状腺機能亢進症に対しプロピルチオウラシルpropylthiouracil:PTUを内服していたことから直ちにPTUを中止し,ステロイドパルス療法後,プレドニゾロン1日30 mgの内服を行い,自覚症状,画像所見は速やかに改善した.本症の肺胞出血の出現には,経時的推移よりMPO-ANCAが発症に関与している可能性が考えられた.
プロピルチオウラシル ミエロペルオキシダーゼ抗好中球細胞質抗体 肺胞出血
Received 平成18年12月4日
日呼吸会誌, 45(6): 508-513, 2007