良性石綿胸水発症9年後に2型呼吸不全を呈し死亡したびまん性胸膜肥厚の1剖検例
諸川 納早1) 高柳 昇1) 生方 幹夫1) 倉島 一喜1) 米田 紘一郎1) 土屋 典子1) 宮原 庸介1) 山口 昭三郎1) 徳永 大道1) 斉藤 大雄1) 柳沢 勉1) 杉田 裕1) 河端 美則2)
〒360-0105 埼玉県熊谷市板井1696 1)埼玉県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科 2)同 病理
症例は51歳男性,30年間の石綿関連職業歴がある.1997年,両側胸背部痛を主訴に来院,胸部CTで両側胸水を認めた.胸水の性状(リンパ球優位,ADA上昇)より結核性胸膜炎を疑い治療を行ったが効果は認められなかった.1998年,胸部CTにて胸膜肥厚が出現,その後増悪傾向を示した.肺機能検査では高度の拘束性換気障害を認めた.2001年に胸腔鏡下胸膜生検を施行,病理学的に線維性胸膜炎であり臨床的に良性石綿胸水と診断した.両側胸膜肥厚はその後も進行性に増悪し一部に石灰化を呈した.一方,石綿肺を示唆する両側肺底区胸膜下の網状影は,2005年にはじめてごく軽度出現したのみであった.2006年,II型呼吸不全による意識障害にて入院,換気不全が進行し死亡した.剖検で両側胸膜のびまん性肥厚と軽度の石綿肺等を認めた.
良性石綿胸水 びまん性胸膜肥厚 石綿関連肺疾患 拘束性換気障害
Received 平成19年8月7日
日呼吸会誌, 46(5): 368-373, 2008