椎茸栽培が原因と考えられた慢性過敏性肺炎の1例~本邦報告例の臨床的検討~
甲斐 直子1) 石井 寛1)2) 岩田 敦子1) 梅木 健二1) 白井 亮1) 森永 亮太郎1)3) 岸 建志1) 時松 一成1) 平松 和史1) 山形 英司2) 門田 淳一1)
〒879-5593 大分県由布市挾間町医大ヶ丘1-1 1)大分大学医学部感染分子病態制御講座(内科学第2) 2)ごとうJ呼吸器・アレルギークリニック 3)大分大学医学部臨床腫瘍医学講座
症例は72歳の男性,長年椎茸栽培に従事していた.持続する乾性咳嗽と労作時呼吸困難が主訴で,胸部CTでびまん性間質性陰影を認めた.気管支肺胞洗浄液中のリンパ球増多がみられ,環境誘発により増悪し,椎茸の抽出物に対するリンパ球刺激試験が強陽性であった.ステロイド治療に反応がみられたものの画像上の改善は乏しく,経過観察中である.椎茸栽培所では大気中に舞う椎茸胞子の吸入により過敏性肺炎を発症することがあるが,慢性型の症例の報告はまだ少ない.自験例を含めた5例の検討では,本症は長年のビニールハウス栽培者に多く,気管支肺胞洗浄液ではリンパ球比率が上昇し,CD4/CD8比が高い傾向にあった.診断に沈降抗体やリンパ球刺激試験は有用であるが,画像所見や臨床経過などを併せた総合的な判断を要する.ステロイド治療は概ね効果があるが,他の原因による過敏性肺炎と同様に抗原回避が最も重要である.
Received 平成19年9月21日
日呼吸会誌, 46(5): 411-415, 2008