haloを伴う結節影が短期間に移動・消失したトキソカラ症の1例
久松 靖史1) 石井 寛1) 甲斐 直子1) 雨宮 由佳1) 大谷 哲史1) 森永 亮太郎1)2) 白井 亮1) 梅木 健二1) 岸 建志1) 時松 一成1) 平松 和史1) 門田 淳一1)
〒879-5593 大分県由布市挾間町医大ヶ丘1-1 1)大分大学医学部感染分子病態制御講座(内科学第2) 2)大分大学医学部臨床腫瘍医学講座
症例は30歳,男性.9年間犬を飼い,しばしば牛のレバーを生食していた.健診での胸部X線写真にて左中肺野に結節状陰影を指摘され,その8日後に胸部CTを施行したところ,左肺内に異常は無く,右肺に2つのhaloを伴う結節状陰影を認めた.血液検査では末梢血好酸球増多と血清IgE高値を認め,血清寄生虫抗体検査にてトキソカラ抗原に対する強い反応がみられた.4週後のCTでは2つの結節状陰影は消失し,新たな小結節状陰影が同側に出現していた.好酸球増多が持続し,トキソカラ幼虫による内臓幼虫移行症としてアルベンダゾールによる治療をおこなった.回虫による内臓幼虫移行症は近年増加傾向にあり,haloを伴う移動性の結節影では本症を疑って血清学的検査をおこなう必要がある.
Received 平成19年11月8日
日呼吸会誌, 46(5): 420-424, 2008