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日本呼吸器学会誌 増刊号 学術講演会プログラム 抄録集 全文PDF

書誌情報

症例

慢性過敏性肺炎の病態を呈した超硬合金肺の1例

坂本 理  小佐井 幸代  興梠 博次 

〒860-8556 熊本市本荘1-1-1 熊本大学大学院医学薬学研究部呼吸器病態学分野

要旨

症例は35歳,男性.15年前健診にて胸部異常陰影を指摘され,精査の結果,超硬合金肺と診断された.ステロイド治療にて改善を認めたが,その後の長期経過観察はなされていなかった.2005年9月の健診にて再度胸部異常陰影を指摘され,乾性咳嗽と労作時呼吸困難の精査も含め入院となった.胸部X線・HRCT所見上,肺の容積減少と両肺野びまん性に網状・スリガラス状陰影が認められ,牽引性気管支拡張像や大小の嚢胞も認められた.血液検査所見では,KL-6 1,321 U/ml, PaO2 73.8 Torr,%VC 67.4%,%DLco 34%と低酸素血症に加え,拘束性障害と拡散障害も認められた.本症は,コバルトと炭化タングステンを扱う職場に勤務しており,BALF中に黒色粒子を貪食する多核巨細胞と多核巨細胞を伴う間質性肺炎の組織像(GIP:giantcell interstitial pneumonia)を認め,元素分析でBALF中粒子にタングステンを確認したことより,GIPの組織像を呈した超硬合金肺と診断した.本症例は,一度目は約2年という極めて短い経過で発症していること,今回は少なくとも約4年前には胸部X線写真上の異常が確認できていることより,コバルトやタングステンによる感作が成立しており,それらが原因抗原となり慢性過敏性肺炎の病態を呈した可能性が考えられた.本症例のように超硬合金に感受性を示す個体は,緩徐進行性の肺線維化を伴う慢性過敏性肺炎の病態を呈する可能性があり,職場環境の改善も含めた十分な対策が必要である.

キーワード

慢性過敏性肺炎  超硬合金肺  巨細胞性間質性肺炎  タングステン  コバルト 

Received 平成19年9月14日

日呼吸会誌, 46(7): 535-541, 2008

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