薄壁空洞の拡大から気胸への進展を胸部CT画像にて長期間観察し得た原発性肺癌の1例
関根 朗雅 萩原 恵里 小倉 高志 佐藤 友英 篠原 岳 馬場 智尚 遠藤 高広 十河 容子 西平 隆一 小松 茂 松本 裕 高橋 宏
〒236-0051 横浜市金沢区富岡東6-16-1 神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器科
症例は71歳男性で,2006年11月に空洞性病変の精査目的に来院した.以前の画像では,2003年の胸部CTにて左舌区に薄壁空洞と,それに近接した小結節影を認めた.2004年には変化を認めなかったが,2006年6月には全周性に壁は肥厚し,空洞径は11 mmから14 mmへと拡大していた.同年11月初診時には空洞径は30 mmとさらに拡大し,一部に壁の菲薄化を認め,12月には気胸が出現した.胸腔ドレーンを挿入したが肺の再膨張は不良で,左舌区域切除術を施行し,低分化肺腺癌の診断を得た.切除肺標本では胸膜破綻部位や空洞内壁に全周性の腫瘍細胞浸潤を認めた.肺癌で気胸を呈することがあるのは知られているが,薄壁空洞の拡大から気胸に至るまでの長期の経過を胸部CTにて観察し得た症例は,今まで報告されていない.本症例は薄壁空洞を呈する原発性肺癌の自然経過を示唆する貴重な症例と考えられ,若干の考察を加えて報告する.
Received 平成19年11月7日
日呼吸会誌, 46(7): 552-557, 2008