予後不良の経過をとった鳥抗原との関連が疑われた慢性過敏性肺炎の1例
河野 あゆみ1) 榎本 達治1) 金子 和代1) 斎藤 均1) 楢戸 律子1) 四方田 真紀子1) 田中 道雄2) 武村 民子3) 中村 清一1)
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿2-34-10 1)東京都立広尾病院呼吸器科 2)同 検査科 3)日本赤十字社医療センター病理部
症例は50歳女性.湿性咳嗽で発症し,3年後に当院を受診した.胸部HRCT上,非特異的な間質性肺炎の所見を認めた.胸腔鏡下肺生検ではfibrotic NSIP(nonspecific interstitial pneumonia)パターンを示す部分が主体であったが,標本内に多核巨細胞やコレステリン結晶が散見された.明らかな鳥飼育歴はなかったが,住居周辺にはしばしば鳥類が飛来し,また羽毛布団を使用していたため,ハトの糞に対する抗体(PDE IgG,IgA)を測定したところ,陽性であったため,鳥関連が疑われる慢性過敏性肺炎(潜在発症型)と診断した.抗原回避のための生活指導,自宅の環境整備を行い,ステロイドおよび免疫抑制剤による治療を開始したが,徐々に病変が進行し,発症後4年で死亡した.慢性過敏性肺炎の早期診断には詳細な検索が重要であり,また治療管理に際しては,患者に対する生活指導に加え,入院施設や医療助成制度にも今後改善が必要であると考えられた.
慢性過敏性肺炎 鳥関連過敏性肺炎 間質性肺炎 非特異性間質性肺炎
Received 平成19年11月7日
日呼吸会誌, 46(7): 558-563, 2008