肺転移巣が腫瘤状陰影を呈した不顕性甲状腺癌の1例
伊藤 昌之 大石 修司 仙波 征太郎 根本 健司 畑尾 英一 清水谷 尚宏 足立 秀喜 岸 厚次 中村 博幸 松岡 健
〒300-0395 茨城県稲敷郡阿見町中央3-20-1 東京医科大学霞ヶ浦病院内科学第5講座
症例は82歳女性.咳嗽と背部痛を主訴に近医を受診した.胸部レントゲンにて右下肺野に腫瘤状陰影を認めたため精査加療目的にて当院を紹介され受診した.経気管支生検にて甲状腺乳頭癌の肺転移と診断され頸部の精査を行った.しかし頸部造影CTおよび超音波検査上は甲状腺の右葉に嚢胞を認めるのみで針生検でも悪性所見を認めなかった.さらに全身検索の結果,多発骨転移および脳下垂体転移が明らかとなり甲状腺乳頭癌の全身転移が疑われた.その後はbest supportive care(B.S.C)を中心に外来通院していたが,初診から約7カ月後に永眠された.病理解剖の結果,甲状腺右葉に直径3 mmと6 mmの甲状腺乳頭癌を認めた.不顕性の微小甲状腺癌が全身転移を来たすことは稀であり,さらに肺転移が胸部レントゲン上腫瘤状陰影を呈することは稀と考えられたため報告する.
孤立性肺腫瘤 転移性肺腫瘍 微小甲状腺癌 不顕性甲状腺乳頭癌
Received 平成20年1月29日
日呼吸会誌, 46(7): 578-582, 2008