一般社団法人日本呼吸器学会 公式サイト
ScholarOne Manuscripts
日本呼吸器学会英文誌 Respiratory Investigation
日本呼吸器学会誌 増刊号 学術講演会プログラム 抄録集 検索用
日本呼吸器学会誌 増刊号 学術講演会プログラム 抄録集 全文PDF

書誌情報

委員会報告

生活習慣病対策におけるCOPDの重要性―「特定健康診査・特定保健指導」への提言―

井上 博雅1)   相澤 久道1)  **  石坂 彰敏1)  一ノ瀬 正和1)  ***  植木 純1)  大田 健1)  大森 久光1)  小川 浩正1)  金澤 實1)  川山 智隆1)  黒澤 一1)  小林 弘祐1)  榊原 博樹1)  玉置 淳1)  陳 和夫1)  栂 博久1)  南須原 康行1)  飛田 渉1)  藤本 圭作1)  南方 良章1)  工藤 翔二2) 

1)日本呼吸器学会肺生理専門委員会 2)日本呼吸器学会理事長

要旨

特定健康診査・特定保健指導の基本理念として,これまでの健診による早期発見・早期治療という治療中心の保健医療制度から,保健指導に重点を置く1次予防への転換が図られている.特定健康診査・特定保健指導の導入により,2015年度には糖尿病等の生活習慣病有病者・予備群を2008年と比較して25%減少させることが目標とされており,これを通じて中長期的な医療費の抑制が想定されている.しかしながら,喫煙という生活習慣により起こる慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease;COPD)はその対象疾患となっていない. COPDは,国民の530万人以上が罹患しており,今後さらに増加すると推定されている.しかし,COPD患者は病気という自覚に乏しく,その90%以上は未診断で放置されているのが現状であり,受診するのは重症化してからが多い.COPDに要する医療費は重症ほど著しく高額となり,早期に発見し介入することにより医療費の節減につながることは,各国で報告されている.COPDは進行性であり,これらのCOPD患者が次々と重症化して受療することになると,それに要する総医療費は膨大なものになると推定される.したがって,今後超高齢化社会を迎える我が国においてCOPDの早期発見と早期介入により総医療費の削減を図ることが急務である. そのために,私たちはCOPDを特定健康診査・特定保健指導の対象疾患とすることにより,一般市民と医療関係者にCOPDの啓発を進めること,実際に特定健康診査でスクリーニングされた疑いのある症例に対して積極介入することにより,COPDに要する医療費を抑制できるものと考える.そこで,特定健康診査に費用がかからず精度の高いCOPD質問票を導入し,これで疑われた患者に対しては二次健診(詳細な健診)としてスパイロメトリーを行うようにすることを提言する.

日呼吸会誌, 46(7): 583-591, 2008

Google Scholar著者名・キーワードは「Google Scholar™ 学術文献検索」の検索結果へリンクしています.