気管支腫瘍との鑑別を要した気管支内異物(スギの葉)の1例
古川 智一1)2) 野上 裕子2) 平山 健司2) 麻生 博史2) 上川路 信博2) 下田 照文2) 庄司 俊輔2) 西間 三馨2)
〒812-8582 福岡県福岡市東区馬出3-1-1 1)九州大学大学院医学研究院心身医学 〒811-1394 福岡県福岡市南区屋形原4-39-1 2)国立病院機構福岡病院
気管支腫瘍との鑑別を要した気管支内異物(スギの葉)の1例を経験した.症例は45歳男性.慢性咳嗽があったが放置していた.喀血と慢性咳嗽を主訴に当院を受診した.初診時CTにて右下葉に粘液栓を伴う気管支拡張と縦隔リンパ節の腫脹を認めたため,第5病日に気管支鏡検査を施行.右B10b+c入口部に辺縁不整の隆起性病変を認めたが細胞診にて診断がつかず,膿性痰が多量で好中球が多く認められたため抗生物質を投与して治療した.2回目の気管支鏡検査では隆起性病変は消失し,その末梢部位に異物を認めたため摘出した.病理検査と詳細な問診にてスギの葉の誤嚥であることが判明した.当初,気管支腫瘍を疑った隆起性病変は,異物による炎症性肉芽腫であることが推察された.慢性咳嗽や喀血などの臨床症状や,気道感染や気管支閉塞などの所見を認める症例においては,異物誤嚥の可能性も念頭に置き診断を進めていく必要がある.
Received 平成19年11月5日
日呼吸会誌, 46(12): 987-991, 2008