マレイン酸メチルエルゴメトリンによる肺胞出血の1例
磯部 和順1) 岩田 基秀1) 石田 文昭1) 鏑木 教平1) 後町 杏子1) 村松 陽子1) 阪口 真之1) 佐藤 大輔1) 佐野 剛1) 草野 英美子1) 坂本 晋1) 高井 雄二郎1) 渋谷 和俊2) 本間 栄1)
〒143-8541 東京都大田区大森西6-11-1 1)東邦大学医療センター大森病院呼吸器内科 2)同 病理部
症例は35歳女性.稽留流産の疑いで子宮内容除去術を施行.子宮収縮目的でマレイン酸メチルエルゴメトリンを0.2 mg静脈投与したところ,数分後に著明な低酸素血症を認めた.胸部CTでは両肺にスリガラス状濃度上昇と右下葉に浸潤影を認めた.気管支鏡では中間幹に凝血塊が認められ,気管支肺胞洗浄(BAL)にて血性回収液を認め,肺胞出血と診断した.肺胞出血の原因を検索したが,肺血栓塞栓症,膠原病,血管炎,悪性腫瘍などは否定的であった.マレイン酸メチルエルゴメトリンによる血管収縮作用により,肺動脈圧および肺動脈楔入圧が上昇し,肺水腫および肺胞出血を生じたと考えられた.マレイン酸メチルエルゴメトリンによる肺胞出血をBALで確認し得た最初の症例報告である.
Received 平成20年5月2日
日呼吸会誌, 46(12): 1007-1012, 2008