6年間の自然経過を辿る事が可能であった肺原発MALTリンパ腫の1例
佐藤 未来1) 若林 修1) 地主 英世1) 吉田 史彰1) 岩代 望2) 荒谷 義和1)
〒041-8512 北海道函館市川原町18番16号 1)独立行政法人国立病院機構函館病院呼吸器科 2)同 呼吸器外科
症例は58歳男性.2007年3月腰部脊柱管狭窄症の手術目的で前医に入院した際の胸部写真・CTにて異常陰影を指摘され当科紹介入院.右肺S3bを中心に両肺野に気管支透亮像を伴う浸潤影を認めた.縦隔肺門リンパ節の腫脹は明らかではなかった.2002年の職場検診での胸部写真において両中肺野に浸潤影を認め,以降毎年受けている同検診での胸部写真上,徐々に陰影が増強していた.気管支鏡下の擦過細胞診や肺生検にて肺リンパ球増殖性疾患が疑われたが確定診断には到らなかったため胸腔鏡下肺生検を行い,免疫染色等の結果から肺原発MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫と確定診断した.腫瘍細胞の遺伝子検索でキメラ遺伝子t(11;18)/API2-MALT1が確認された.他院にて化学療法を行い陰影はほぼ消失した.6年間の自然経過を辿る事が可能だった本症例の画像所見の推移と病理所見について報告する.
Received 平成20年5月7日
日呼吸会誌, 46(12): 1013-1018, 2008